CS-2章 ハードウェアを理解しよう
【CS02-05】自分でコンピュータを作る時代
コンピュータを作るというのは、パソコンを作るとイメージしそうですが、今回お話する内容はちょっと違います。パソコンはなんでもできる汎用機ですが、コンピュータは今やあらゆるところに搭載されています。
自宅の庭に花壇を作ったり、ホームセンターで板を買ってきて洗濯機の上に設置する棚をつくったりするように、庭先に小さなセンサとカメラを使って作ったコンピュータを設置して、そこに人が来たらスマートフォンにその人の写真を送ってくるなど、インターネットやコンピュータを活用してIoT(モノのインターネット:Internet of things)を楽しむ時代にもなってきました。
自分の家に自作のコンピュータを導入して、徐々にスマートハウスを完成させていくのも夢ではありません。
IoT,モノのインターネットとは?
IoT(アイオーティー)はInternet of Thingsの略で「モノのインターネット」という事です。変な言葉に聞こえますが、いままでのインターネットは人が情報を検索したり、モノを注文したりする「ヒトのインターネット」だったと思うと、これからはモノがネットに繋がって動作する「モノのインターネット」という考え方がわかりやすいかもしれません。
IoTで車や家電品、家自体もインターネットにつながって人々の暮らしを豊かにしていきます。IoT製品も沢山発売されています。
デジタルものづくりの世界
これからもIoT製品は続々リリースされてくると思いますが、これらIoT製品を「自作する」というムーブメントも起こっています。
今はだれでもアイデアさえあればこれらコンピュータを作れるような環境が整っています。開発のためのソフトウェアは殆どが無料で配布され、しかも専門的な知識がなくても少し練習すれば、ブロックを組み上げていくように、簡単にプログラムを作れるようにもなっています。
なにより、低価格のコンピュータの登場がこれら自作のムーブメントを後押ししています。数百円~数千円程度でコンピュータを購入し、パソコンでデザインやプログラムを作って、身の回りで役に立つIoTコンピュータを作るのです。
今では自作用コンピュータには様々な種類のものが用意されています。
だれでも簡単にスタート、マイコンの世界
Fabshopでも多くのマイコンの話題を取り扱っていますが、何から始めたらいいのか、どんなマイコンを使っていけばよいのかと良く質問されます。マイコンにはそれぞれ特徴があります。以下に代表的なものをご紹介していきます。
micro:bit(マイクロビット)
プログラミング初心者、マイコンについても完全初心者という方はmicro:bitがおすすめです。若年層の教育用に作られたマイコンですが、温度センサや加速度センサ、LEDディスプレイなども搭載していてプログラミングの基礎を楽しく学べ、かつ実用的なものの製作にも役立ちます。価格も2,000円程度で、microUSBでパソコンとつないでプログラムを行います。詳しくはFabshopのmicrobitコーナーでも紹介しています。
Arduino UNO(アルデュイーノ・ウノ)
ArduinoはArduino言語というプログラミング言語で動作させるマイコンです。Atmelマイコンを搭載して入出力のポートも備えて応用範囲もとても広く、拡張用のボードも沢山発売されています。開発がしやすいようにワンボードになっていますが、慣れてくると写真の開発ボードにあるマイコン部分(中心から少しずれたところに配置されている黒い長細い板のような部分)だけを購入して、まわりの回路も自分で作ってコストを抑えるやり方なども可能です。
ESP32 Dev KitC(イーエスピー32)
ESP32 Dev KitCはArduinoと同じように入出力ポートを持ったブレットボード(はんだ付けしなくても電子部品を結線できるボード)に刺してジャンプワイヤなどで配線して使うマイコンです。最大の特徴はWi-FiやBluetoothなどの通信機能を搭載しているのと、それでいてArduino UNOよりも低価格だという事です。
プログラミング言語にもC, C++, Javascript BASIC や今人気のMicro Pythonなどでも動かせます。
これらマイコンの開発にはパソコンが必要です。パソコンに開発用ソフトをインストールしたり、またはウェブサイト上で開発が行えて、そのソフトウェアは殆どがフリーで配布されています。つまりこれらのマイコンとパソコンがあればだれでもIoTの開発がスタートできます。
プログラムもインターネット上にサンプルなどが沢山置かれているため、参考にしながら機能を付け加えられます。初心者にも分かりやすくビジュアル言語と呼ばれるブロックを組み合わせて作るようにプログラムができるようになっているのも誰でもスタートできる要因の1つです。
プログラムと言うと英語のような記号のような文字列が並んでいるイメージですが、ビジュアル言語なら日本語にも対応しています。
フィジカルコンピューティングの世界へ
コンピュータは様々なところで活用できます。これらマイコンを使って自宅や身の回りのものをIT化するという趣味はこれからどんどん広がっていくでしょう。低価格なマイコンや電子部品が沢山リリースされるなか、人によってニーズが違うためメーカー側もなかなか量産できないという現状もあります。
一方でデジタルモノづくりの世界では自分に必要なところに必要な仕組みをコンピュータで作ることができます。今まではキーボードとマウスからしかコンピュータに指示をしていませんでしたが、タッチパネルや人感センサなどを活用して、人の動きや明るさ、声や音などを検知してコンピュータが動作する仕組みを自分で作れます。このようなコンピューティングの事を「フィジカルコンピューティング」といいます。Google HomeやAlexaなどはフィジカルコンピューティングの1つです。もちろんこのようなAIスピーカと呼ばれるものも学んでいけば自分で作ることも可能です。
メーカー・ムーブメント
パソコンをはじめ、これらマイコンの登場や3Dプリンタ、レーザー加工機など高度な機器やツールの低価格化により、ここ10年くらいの間にメーカームーブメントと呼ばれる個人でのものづくりのムーブメントが世界中で起こっています。個人でモノづくりを行う人たちの事を「メーカーズ」と呼び、DIYプロジェクトをソーシャルメディアや動画サイトなどで共有し今までにないデジタルを活用したモノづくりが活発におこなわれています。
フリーミアムやロングテールなどの世界的ベストセラー書籍の著者「クリスアンダーソン」の「メーカーズ」という書籍により更にそのムーブメントが広がりました。
さらに世界的に開催され、日本では東京や京都で開催されているMakerFaireなどでは子供から大人まで多くの人たちがデジタルモノづくりを楽しんでいます。
今回のテーマである自分のコンピュータを作るという話題はFabshopの中でも多数取り上げています。具体的な学習の環境づくりなどは「はじめよう!自分コンピュータプロジェクト」をご覧ください。