クリスタルラジオを作って電気・電波の基本が学べる!
秋月電子で販売されているAVIOSYS社製のクリスタルラジオキット「K23 Crystal Radio」はたったの6種類の電子部品8個を使って作れる簡単なラジオです。AMの電波を受信してクリスタルイアホンから電池なしで放送を聞くことができます。
はんだ付けして作るキットですが、大きめの基板に部品が離れて配置されているため、はんだ付けもしやすく、はじめてはんだ付けを行う子供にも最適です。
今や当たり前のように誰でも使っている電気や電波の基礎が学べる教材としてすべての人たちに一度は体験してもらいたいキットです。
>>秋月電子通商 ゲルマラジオキット Crystal Radio 2PK2300
ラジオの原理と電池が無くても聞こえる理由
秋月のキットではクリスタルラジオと呼んでいますが、ゲルマニウムラジオとか鉱石ラジオと呼んだりもします。名前の由来には電波から音を取り出す際にゲルマニウムダイオードを使うためです。
電波とは「電気の波」です。ですから飛んできた電波をアンテナで受けるとそこには電気が流れます。その電気がクリスタルラジオの中を流れ、微弱な振動を音として伝えることができる特別な「クリスタルイアフォン」を使う事でラジオ放送を聞くことができます。
販売されているラジオなら飛んできた電波はとても微弱なため、「増幅回路」と呼ばれる小さい信号を大きくする回路を通して利用し、アンプなどを通してボリュームで音量を変えたりできますが、それらを動かすには電気が必要になります。
【この回路の仕組み】
ラジオは搬送波と呼ばれる高い周波数の電波に声や音楽などの可聴周波数をのせて送信しています。
このラジオではAM波のラジオ放送を受信します。アンテナから入ったAMの電波は、1,000KHz前後の周波数のものです。最初についているR1、C1でAM波だけを拾うようにフィルタリングします。そしてラジオ局の周波数を受信できるようにVC1を動かしてチューニングを行います。1,000KHz前後の高い周波数は人の耳には聞こえませんので、送ってきた電波の波を取り除いて音声だけにします。
ダイオードで入ってきた波を整流してプラス側だけが出力に出るようにし、その後にある抵抗とコンデンサの回路で検波され音声信号がクリスタルイアフォンに送られ、イアフォン内の振動子が揺れて音として聞こえます。
【キットの電子部品一覧】
- R1 – 5.6MΩ (抵抗)
- R2 – 2MΩ (抵抗)
- C1 – 332pF (コンデンサ)
- C2 – 33pF (コンデンサ)
- C3 – 10μF(電解コンデンサ)
- D1 – ダイオード
- VC1 – 可変容量コンデンサ
- L1 – コイル
- EarPhone – クリスタルイアホン
- アンテナ線
【注意!】キット以外に必要な部品としてアンテナと同じくらいの長さのリード線が必要になります。(完成例についている赤いリード線です。)
最も原始的なラジオは完成しても簡単には聞こえません!
さて、最も原始的なラジオは売っているラジオの様に簡単に聞こえるものではありません。しかしきちんとはんだ付けして、別付けのアース線をつなぎ、電波が受信しやすい状況を作ればちゃんとラジオ局を受信できます。つまり電波の仕組みやどのような環境下だと受信しやすいかを理論や経験から学んでいく事でしっかりと電波を受信できるようになります。
AMラジオは1,000KHz前後のいわゆる中波放送です。受信するためには本来であれば数メートルの長さのアンテナが必要ですが、AMラジオはけっこういい加減な長さのアンテナでも受信できてしまいます。
しかしながら付属している程度のアンテナの長さだとさすがにちょっと辛いのですがアース線を導電性のものに接触させてアンテナのようにして使うとしっかりとラジオ放送が受信できます。
以下の写真のように自宅の塀の柵の金属の部分に接触させて、ゆっくりとバリアブルコンデンサを調整していくと、TBSラジオやNHKなどがけっこうしっかりと聞こえました。
その後、柵の前にアース線を垂らしただけでもこれまたしっかりと聞こえました。
自宅のベランダなどに出て鉄の部分などに接続してみるとさらに4局くらいのラジオ放送を受信できました。
電池を使わずに増幅もしていないラジオですから、音声自体は非常に小さく聞こえます。今回の受信の実験では4つくらい同じものを作って聞いてみましたが、クリスタルイアホンの特性によって音が大きく聞こえるものと小さく聞こえるものでバラつきがありましたが、全てで聞くことができました。
特別なイアホン「クリスタルイアホン」
付属しているクリスタルイアホンは普通のイアホンではありません。ですから、音楽プレイヤーなどで使っているイアホンを挿してもクリスタルラジオから音は聞こえません。
実はこのクリスタルイアホンもこの回路の重要な部分で、電源を使わずに受信した電波の微弱な電気で稼働させる回路だけに、出力に出てくる音声もとても微弱です。
クリスタルイアホンは酒石酸カリナトリウムの結晶であるロッシェル塩やセラミックを使ったもので、結晶に圧力を加えると圧電効果により電圧が発生し、結晶が振動します。微弱な電圧にも反応するため、電波からの電気信号程度でも音の振動を生み出すわけです。
聞こえたときの感動は何とも言えません!
Fabshopではサマースクールなどでこの回路を子どもたちが作って、みんなで外にチューニングに出かけます。子どもたちはラジオ放送が聞こえたとたんにとても喜びます。自分で作った回路で、しかも自分で調整して電波を受信することができた達成感があるからです。
場所を変えてみたり、アース線を繋ぐ場所を変えたり、アンテナを他の金属に接触させたりといろいろな事を試して受信できるため、とても良い勉強になります。
是非お試しください。