Maker Faireは世界中で行われている「ものづくり」の祭典です。日本でも東京と今年から京都でも開催されるようになり、大垣市ではMaker Faire miniが開催されるなど、徐々に日本でもその認知度を広げています。昨年、私たちFabshopもニューヨークのMakerFaireに出展しましたが、米国ではMaker Faire New Yorkとならんでサンフランシスコ郊外のサンマテオで行われるMaker Faire Bay Areaが二大Maker Faireとして知られています。
今回は、2日間とも雨が降ったりやんだりとぐずついた天気の中の開催となったMaker Faire Bay Area 2019を見てきましたので、レポートします。
シリコンバレーで行われるMaker Faire
Fabshopスタッフも情報収集のため、ここ5年くらい毎年足を運んでいるメーカーフェア・ベイエリアは、サンフランシスコからサンノゼなどいわゆる「ベイエリア」で行われるためこの名称が使われています。このエリアと言えば、テック系企業の本社が軒を連ねるいわゆる”シリコンバレー”。メーカーフェアの中でもテック系の出展者が多いイメージがあります。
その年のトレンドによって出展企業も変わる中、5年くらい前には3Dプリンタや3Dスキャンなどがブームで多くの企業が出展し同時にKickstarterにてクラウドファンディングを行うなどを仕掛けていましたが、ここ2年くらいは起業を目指したメーカーズの数は少なくなってきている傾向にあり、アマチュアやヤングメーカーズ、女性メーカーの参加が増えてきています。
パーソナルファブリケーションの流れ。
2年ほど前までのメーカーフェア・ベイエリアではものすごい数のSTEM教育のプライベートスクールが出展していました。今年も多数の学校が出展していたものの、その数は激減。すでにクローズしているところもあるようです。生き残ったスクールが生徒を集め、今年もロボットの展示やマイコンを使ったトーイなど新しいものを作るメーカースペースの役割も果たしながらスクーリングをおこなっているようです。
米国ではプライベートスクールだけでなく、高校などでも積極的にSTEM教育に力を入れています。今まではいわゆる普通科としての学校もどんどんこれらの教育を取り入れ、クリエイティブな授業を行っているようです。学校の中にもMaker Spaceが用意されていて、誰でも自由に創作活動ができるようになっていたり、クラブ活動などでメーカーズを養成しています。
STEAMとSTEAM
STEMはScience(科学)、Technology(テクノロジー)、Engineering(エンジニアリング)、Mathmatics(数学)の頭文字をとって略したものになりますが、近年ではこれにArt(美術)をプラスしたSTEAM教育も盛んです。Artが入ることにより、女子の参加も多くなった事もあり、女性の参加が多くなっているともいえるでしょう。
マイコンも多く展示。癒し系ロボットも。
Arduino、RaspberryPiなど定番となっているマイコンやコンピュータを搭載した応用例は今年も多く展示されていました。SONYが2018年8月にリリースしたIoTボードSPRESENSEも展示され、農業分野での活用例などが展示されていました。
ロボットでは癒し系のロボットも出展されていました。マイコンの高性能化とAIなどにより、周辺認識や機械学習によって人間と対話するようなロボットから、自動運転のRCカーなども展示されていました。
ロボットエンジニアによるROBO JAMも開催され様々な機能のロボットのコンペティションも開催されていました。
今年で最後かもしれない?メーカーフェアベイエリア?
今回出展者の方たちと話をしている中で多くの人が語っていたのが「今年でベイエリア開催は最後になるんじゃないか。」という事でした。ここ数年のメーカーフェアを見ていても5年前と比べて驚くような作品やアイデアにあまり出会わなくなってきています。出展者の数は多いもののキックスターターに出るようなアイデアはが出てきておらず、子どもと大人がモノづくりを体験するお祭りに近づいてきた感も否めない状況でした。Googleがはんだ付け講座を行いDigikeyがブレットボード体験などを開催していたものの、これらも以前からあるものであまり変わり映えのしない状況でした。
高いレベルの日本のメーカーズ
今回最も印象に残ったのは日本から参戦しているメーカーズの質の高さです。日本のメーカーズのブースには多くの人だかりが出ていて、内容もメーカーフェアらしいパーソナルファブリケーションにもってこいの内容が多かった印象です。デスクトップミニチュアリフロー機や風力で進むロボのペーパークラフトなどユニークな作品の中、今回のフェア開催前から話題になっていた自己解決ルービックキューブはメディアからも多くの注目が集まっていました。
今年で最後になるかもしれないといわれているのが、スポンサーの減少も理由にあるようです。メーカーフェア・ベイエリアの開催場所はシリコンバレーの中のサンマテオという場所。このあたりはマンハッタンより地価が高いとされている場所で、サンマテオ・イベントセンターの会場費などがかさむことも理由の一つではないかと参加者の憶測が飛び交っていました。
これらは決してメーカーブームの終焉を意味しているものではなく、すでにDIYからさらに発展したパーソナルファブリケーションという考え方が定着したという中、破竹の勢いで急加速したメーカーブームが落ち着き、次のイノベーションを待っている状態とも言えます。インストラクタブルなどを見ていると、日々新しいモノづくりの種がアップロードされてきているため、これから2,3年後にEVやAIなどの応用が登場することで次のステップのメーカーフェアを見えれるに違いありません。
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