基板上のハンダが除去できれば自由度アップ!
電子基板に部品がハンダ付けされている電子回路。製作途中に「部品を逆向きにハンダ付けしてしまった」「指示と違う穴に部品をハンダ付けしてしまった」「作った回路の部品が壊れてしまった」などの場合、正しい状態に戻すことはできるのでしょうか?
答えは「多くの場合はできる」。ハンダ付けされている部品であっても、落ち着いて正しい手順で作業を行えば交換は可能です。
「銅喰われ」に注意!
基板上の同一個所に複数回ハンダごてを当てる場合「銅喰われ」に注意が必要です。
銅喰われというのは、溶融したハンダに基板のランドやスルーホールの銅の成分が溶けだして、ランドやスルーホールが無くなってしまう現象です。鉛フリーハンダの場合に発生します。
銅喰われのほか、熱によるランドの捲れ上がりなどにも十分注意して作業しましょう。
基板上からハンダを除去する方法
基板上にあるハンダを除去する方法は、以下のものがあります。
ソルダーウィック(ハンダ吸い取り線)
ハンダと一緒に網目状の銅線をハンダごてで加熱してハンダを吸い取ります。必要ない部分に接触すると熱が伝わって他のハンダにくっついたりするので注意が必要です。
ハンダが吸い取れなくなったら、ハンダが付着した部分をカットして新しい面を使用しましょう。
ソルダーウィックの使い方
- ハンダを除去する場所に合わせた幅のソルダーウィックを用意します。
15センチくらいリールから引き出します。 - ソルダーウィックをピンセットやラジオペンチでつかみ、ハンダを除去する場所に当てます。
(ソルダーウィックを素手で持って作業するとヤケドします、注意!) - ソルダーウィックの上からこて先を当てます。ハンダとソルダーウィックを加熱するので、少し大きめのこて先だと作業がしやすいです。
- ハンダが溶けてソルダーウィックに染み込んでいきます。
ハンダが染み込んだ部分はニッパーでカットします(ソルダーウィックが冷えてから)。 - ハンダが除去できるまで数回繰り返してハンダを除去します。
- ハンダの除去後、取り切れなかったハンダがあるとリードとランド、スルーホールがハンダ付けされている状態になるので、無理に剥がさないようにします(軽くピンセットなどでリードを揺らすとハンダが割れて取れる場合がありますが、ランドやスルーホールが変形したり切れたりしないように注意してください)。
※スルーホール内のハンダがうまく除去できない場合は、ハンダを盛り直してから再チャレンジするとうまくいくことがありますが、銅喰われが発生しやすいので細心の注意を払って行ってください。
ハンダ吸い取りポンプ
注射器状のハンダ吸い取り器です。中にばねが仕込まれています。セットした状態で溶けたハンダに付けてスイッチを押すとポンプの吸い上げにより一気にハンダを吸い込んで除去します。
ポンプが強力なタイプはハンダの除去力も強いのですが、基板のランドやスルーホールごと吸い取ってしまうこともあるので加熱しすぎないように気をつけましょう。
ハンダ吸い取りポンプの使い方
下記2~3はハンダが冷えて固まる前にスピーディーに作業する点に注意してください。
- ハンダを除去したいところをこて先で加熱してハンダを溶かします。
- ハンダが溶けた状態でセットした吸い取りポンプの先端を密着させます。
- 吸い取りポンプのスイッチを押してハンダを除去します。同時にこて先を離します。
- ハンダの除去後、取り切れなかったハンダがあるとリードとランド、スルーホールがハンダ付けされている状態になるので、無理に剥がさないようにします(軽くピンセットなどでリードを揺らすとハンダが割れて取れる場合がありますが、ランドやスルーホールが変形したり切れたりしないように注意してください)。
ハンダ除去機(中級者以上向け)
先端が丸い穴が開いたハンダごて上のノズルになっておりハンダを溶かします。ハンダが溶けた状態で本機の引き金を引くと真空ポンプが動作してハンダを吸い取ります。プロの現場でもハンダの除去作業に使用されているものです。
1台あると修理作業などに大変便利ですが、廉価なものでも3万円くらいするので、ハンダ付けのレベルアップを目指す方におすすめするものとなります。
状況により作業方法は異なる
1.壊れた部品を交換する場合
基板上の部品が何らかの原因で壊れてしまい、これを交換する場合です。この場合は前提として「取り外した部品は壊れているので再利用しない(捨てちゃう)」という状態なので、作業は比較的容易です。
- 取り外す部品のリードを1本ずつニッパーでカットします。この状態になれば、リードを1本ずつ抜いていけばいいので、簡単に作業できます。
- 基板をクリップアームなどで固定します。利き手の側からハンダごてを当てられるようにセットしましょう。
- リードのカットした側をラジオペンチなどでつかみ、ハンダ面からハンダごてを当てます。
ハンダが溶けてリードが動く状態になったら引き抜きます。
- 他のリードも同様に引き抜きます。
- すべてのリードを抜き終わったら、基板をクリップアームから外し、ハンダ面を上にして置きます。
- ソルダーウィック(ハンダ吸い取り線)を使って基板に残ったハンダを除去します。ソルダーウィック使用時は熱量が必要なので、大き目のこて先(3Cなど)を使用しましょう。スルーホール内のハンダも吸い取りましょう。
- 焦げたフラックスは工業用エタノールやフラックスリムーバーなどの薬品を付けた布などでふき取りましょう。
- 交換用の部品をハンダ付けして完成です。
2.製作途中での修正
電子回路を制作する途中で「部品を違う場所に付けた」「向きを間違えた」などの場合です。
この場合、部品のリードをカットするなどはできないため、ソルダーウィックを使用して各リードのハンダを吸い取ってから部品を外すのが確実です。場合によっては複数のランドのハンダを同時に溶かして部品のリードのハンダをすべて溶かしてから部品を引き抜くなどの技もあります。
前述の1「壊れた部品を交換する場合」のほうが基板への負担が少ないので、同じ部品が手に入る場合、基板を破損しないためにも1の方法が行えるのであればそちらをおすすめします。
今回はリードが2本あるLEDを取り外します。LEDを逆に取り付けてしまうなどのミスはよく起こるので、直し方を知っておくと、いざというときに焦らずに済みます。
- LEDの各リードのハンダをソルダーウィックで吸い取ります。
- 部品を優しく揺らしてみて、リードが動くことを確認します。
リードが動かない場合は、残ったハンダでくっついている状態ですので、もう少しソルダーウィックで残ったハンダを吸い取りましょう。 - 部品を取り外します。
- 基板上の余ったハンダが気になる場合はソルダーウィック(ハンダ吸い取り線)で除去します。
- 焦げたフラックスは工業用エタノールやフラックスリムーバーなどの薬品を付けた布などでふき取りましょう。
- 部品を正しく付け直したら完成です。
ちょっと難しいけど、できます
ハンダ付け箇所の修理や部品の交換は、少し難しい作業ではありますが、コツをつかめばできるようになります。
状況に合わせて、まずは基板を破損しないように注意しながら作業を行いましょう。